この記事では、「定年後」を考えるための必読書といえる「定年準備 ~人生後半戦の助走と実践~」楠木 新 著(中公新書)をご紹介します。
楠木 新さんは、大手生命保険会社で60歳定年まで勤めあげたあと独立されました。
その後、執筆活動やセミナーのほか大学教授をされたり、「楠木ライフ&キャリア研究所」を立ち上げられたりと、アクティブに活躍されています。
楠木 新さんの書籍は、別記事(»おすすめ本!50代後半、定年前のモヤモヤ解消! 最初に読むべき3冊)でもご紹介させていただきました。
その記事でご紹介した「定年後 ~50歳からの生き方、終わり方~」の続編といえるのが、当書「定年準備 ~人生後半戦の助走と実践~」になります。
「定年後」は、定年前後のギャップや、課題の実態を解説してくれます。
「定年準備」は、定年までどのように助走し、実践的な行動に結びつけるかに主眼が置かれているのです。
どちらの書籍も、ただの「一般論」ではありません。
楠木さん自身がいろいろな方を取材された言葉ですので、とても説得力があります。
さらに「定年準備」は、楠木さんご自身のことにも多く触れられていますので、いっそう重みが加わります。
47歳の時にうつ病で長期休職、平社員まで降格になり、そのご経験から「楠木 新」というペンネームで「働く意味」をテーマに執筆活動を始められた苦労人なのです。
内容一部をご紹介します。
キャリアコンサルタントの資格を取得するために手に取ったテキストには、「自分自身を洞察して『自己理解(自己分析)』を行い、職業情報を把握する『仕事理解』を経て、そして『意思決定』する」と書いてあった。(中略)
ところが会社員から転身した人のインタビューを始めると、そういうプロセスをたどらないことがすぐに分かった。
大半の人が計画的な意思決定ではなく、人との偶然の出会いなどによって次のステップが見えてくるのである。
(P173 「第6章 魅力的な先達に学ぶ」より)
どのような仕事が世の中に存在していて、自分にとっての適職は何か、そのために自分は何ができるのかを、いくら頭で考えても答えは出ない。
自分に合った仕事がどこかに転がっているのではないからである。
だから「好きなことを仕事にする」ということがよく喧伝されているが、それだけではうまくいかないというのが私の実感だ。
(P175 「第6章 魅力的な先達に学ぶ」より)
この言葉は、意外と重い言葉です。
楠木さんは、多くの取材からそう感じられたのでしょう。
視点を変えると、大学生の「就活」でもあてはまる言葉ではないでしょうか。
年齢が変わっても、経験を積んだとしても、常に未来のことは思ったとおりにいかないということがわかります。
「他人は変えることができないが、自分は変えることはできる」といったたぐいのことがよく言われる。しかし考えてみると自分を変えることは至難の業である。
持って生まれた性格や個性はいくら変えようと思っても手を付けることはできない。モノのように単純に自分を操作するわけにはいかないからだ。
少し割り切って言えば、変えることができるのは自分自身ではなくて自分と他者(家族、友人、同僚、顧客など)との関係、および自分と組織との関係なのだ。
(P211〜222 「第7章 逆境がチャンスに」より)
定年後に何か新しいことを始めるとなると、今までの自分を変えなければならないと思う人も少なくない。(中略)
しかし、仕事の技能などでいきなり自分自身を変えることは本当に難しい。(中略)
そういう意味では、自分を変えようとするよりも、ありのままの自分をどこに持っていけばよいのかを検討するほうがうまくいく。
(P244〜255 「エピローグ 第六条 自分を持っていく場所を探す」より)
数十年ぶりに会った友人を見て、「昔と変わってないな」と思うことが多いのではないでしょうか。
そして、友人からも「昔とかわらないね」と言われます。
自分は変わらないという前提で考えた方がうまくいくと、ズバリ指摘してもらえると気が楽になりますね。
「ありのままの自分」で、「考えても答えがでないこと」を「考え」て、「人との偶然の出会い」を大切に進んでいく。
当書籍は「定年後」をテーマにした哲学書のようです。
楠木さん自身の体験談と、多くの取材から得られた言葉は、「定年後」を生きるための「理念」が感じられます。
楠木さんの書籍は、巻末に参考文献が豊富に記載されていることも特徴です。

読んだ方それぞれ、気になった部分が異なるはずです。
なぜそこが気になったのか深掘りしていけば、自己理解・自己分析につながります。
今すぐに深掘りしなくても、感想を「メモ」に残しておくだけでもあとで必ず役に立ちます。
簡単な「メモ」の取り方は、»今はじめないと「定年後」に絶対後悔する【日常の簡単な3つの行動】をご参照ください。
さらに「メモ」の取り方を極めたいという方は »「メモ」の有効性を学べるオススメ書籍 【メモの魔力】もぜひ参考にしてみてください。
「定年後」を考えるための、具体的なノウハウが知りたくなった方におすすめなのが、別記事「まさにタイトルとおりの本!【知らないと後悔する定年後の働き方】(木村 勝 著)」です。
楠木さんの書籍とのポジションの違いも解説しています。気になった方は、こちらもぜひお読みください。
今回は以上です。