よくある「定年後」情報にまどわされない考え方【オススメ書籍3選】

常識を疑え

ネットで「定年後」のいろいろな情報を読んでいたら、よけい頭が混乱してきた。

かえって「あせり」や「不安」を感じるようになった

こんなことが定年後の常識なのか…。「悲観的」な気持ちになってきた

「定年後」についていろいろ情報集めているうちに、このような気持ちになっていませんか?

本記事では、常識として語られている「定年後」情報にまどわされないよう、視点考え方が変わるオススメ書籍を3冊ご紹介します。

いろいろな情報を読んでいるうちに、「あせり」や「不安」を感じて「悲観的」な気持ちになってしまった人にぴったりです。

それではさっそく始めましょう。

メディアの「定年後」情報は、なぜ不安になるのか

Google検索画面

はじめに、ネット等のメディアで「定年後」情報を調べていると、なぜ「あせり」「不安」を感じてしまうのかをご説明します。

「定年後」に気になる代表的な5つの分野でネット記事のパターンを調べてみました。

5つの分野とは、「仕事」「生活費」「生きがい」「健康」「定年年齢」です。

(この内容については、別記事 »「「定年後」は皆どうしているのか?【データで見る定年後】」で取り上げていますので、興味のある方はぜひお読みください。)

検索結果の上位の記事を読んでみると、このようなパターンがあることに気がつきます。

興味ひかれる話題で始まりますが、途中で「大袈裟なあおり」があり、その解決策として自社の「商品・サービス」を紹介するというものです。

分野/記事「起」「承」「転」
大袈裟なあおり
「結」発信元
仕事
・定年後も多くの
人が働いているこ
とについて。
・定年後の仕事は
警備員、清掃員、
介護員、マンショ
ン管理人しかあり
ません

・転職、求人サイ
トを上手に活用し
ましょう。
転職、
求人関係企業
お金・定年後の悠々自
適な生活と生活費
について。
・年金だけでは足
りないですよ。
・よくある退職金

運用の失敗例。

・退職金を上手に
資産運用しましょ
う。
金融関係企業
生きがい・生きがい持つの
は大切。
・趣味ややりたい
ことについて。
・定年後にやって
はいけない事例。
・熟年離婚の事。

・人それぞれしっ
かり考えて準備し
たほうがいいです
よ。
新聞等
メディア関係企業
健康
終活

・定年後の過ごし
方、生き方、健康
のこといろいろな
話題。
・健康でないと何
もできないです
よ。
・人は終わ方が肝

心ですよ。

・健康保険はどう
したらいいのか。
・終活考えてみた
らどうでしょう。
健康保険組合
葬儀系企業等
定年制度・法律の改正につ
いて。
・雇用義務が60歳
から65歳までに移
行、70歳まで努力
義務開始。
・メリットとデメ
リット。
・さまざまな意見

がある実態。

・統計からみた働
き方についてのさ
まざまな課題への
検討を進めています。
行政関係

読んでいる側は「大袈裟なあおり」ばかりが印象に残って、「あせり」「不安」を感じてしまうというわけです。

(大袈裟なタイトルについては、別記事 »「定年」の新常識2024【雑誌 プレジデント2024.3.29発売号】でふれてますので、興味がありましたらご一読ください。)

常識イメージ

さらにどの記事でも「パターン化したあおり」が繰り返されるので、それがあたかも「常識」かのように刷り込まれてしまうのです。

今回ご紹介する3冊を読むと、そのような「常識」に左右され「あせったり」「不安になる」ことがばかばかしく思えてくるはずです。

「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」 ハンス・ロスリング 著(日経BP社)

FACTFULNESS

1冊目の「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」は、医師であるハンス・ロスリング氏がその息子夫婦とともに執筆した、2020年に最も売れたビジネス書です。

この本では、「これが常識だ」と考えているものの中に、さまざまなバイアス(先入観や偏見)がかかっていることを分かりやすく解説しています。

冒頭に「13問のクイズ」があります。

すべて3択なのでチンパンジーが無作為に選んでも1/3である4問正解、正解率33.3%ということなので、かなり真剣にやってみました。

結果は正解2問。15.4%の正解率。残念ながらチンパンジーに負けてしまいました。

ハンス・ロスリング氏はこのクイズを高学歴者や専門家に実施したところ、平均正解率は16.6%。こちらもチンパンジー以下だったとのことでした。少し安心しました。

不正解の原因が常識という名のさまざまなバイアス(先入観や偏見)だと語っています。

そのことを「10の思い込み」に分けて、その概要と対処法を解説しています。

第6章で解説しているバイアスは「パターン化本能」です。

まさに、メディアの影響について触れている章になります。

パターン化は、メディアの十八番でもある。

パターン化がメディアにとって手っ取り早い情報の手段になり、それが誤解を生みだしている。…(中略)…

間違ったパターン化は思考停止につながり、あらゆる物事への理解を妨げてしまう。

(P190「第6章 パターン化本能」より)

これを「定年後」記事にあてはめるとこうなるのでしょう。

定年後の職業は、警備員、清掃員、介護員、マンション管理人しかない。

定年後の生活費は年金だけでは足りない。

定年後は生きがいを持たないと寂しい人生になる

という間違ったパターン化は思考停止につながり、あらゆる物事への理解を妨げてしまう。

パターン化を避けてゼロベースで考えてみようという気になりました。

第4章で解説しているバイアスは「恐怖本能」です。

「恐ろしいものには自然と目がいってしまう」傾向に気づき、リスクを正しく見極める大切さを解説しています。

「恐怖」と「危険」はまったく違う。

恐ろしいと思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。

一方、危険なことには確実にリスクがある。

恐ろしいことに集中しすぎると、骨折り損のくたびれもうけに終わってしまう。

(P158 「第4章 恐怖本能」より)

これも「定年後」に置き換えて考えてみました。

「定年後」の「不安」と「危険」は全く違う。

不安に思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。

不安なことに集中しすぎると、骨折り損のくたびれもうけにおわってしまう。

「不安」はリスクそのものではないと考えることができます。

最後に、自分に言い聞かせた言葉をご紹介します。

謙虚であることは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくことだ。

自分の知識が限られていることを認めることだ。

堂々と「知りません」と言えることだ。

新しい事実を発見したら、喜んで意見を変えられることだ。

謙虚になると心が楽になる。何もかも知っていなくちゃならないというプレッシャーがなくなるし、いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい。

(P316「第11章 ファクトフルネスを実践しよう」より)

たとえ人には、“堂々と「知りません」” と言えなかったとしても、自分自身にだけは素直に言い、“喜んで意見を変えられる” よう謙虚でありたいと思った言葉でした。

この意見だけは “素直に変えない” ように心がけます。

「99.9%は仮説 ~思い込みで判断しないための考え方~」竹内 薫 著(光文社新書)

2冊目の「99.9%は仮説」は、サイエンス・ジャーナリストである竹内 薫氏が執筆した著書です。

科学的なアプローチから「思い込み」の危険性を解説したビジネス書と言えます。

時々読み返しているのですが、そのたびに驚かされます。

「ファクトフルネス」を読んでこの本をすぐに思い出しました。

アプローチは違いますが、言いたいことは同じく「常識を疑え」ですので。

冒頭から完全にノックアウトされます。

オーストラリアの世界地図は上下がさかさま

飛行機が飛ぶ理論を完全に説明できない

本当なの? と思ってしまいます。

実際そうなのか調べてみました。

すると、オーストラリアには確かに上下逆の世界地図が販売されています。

飛行機の揚力がうまれる仕組みも「理論的な根拠を説明するにはまだ複雑な議論がある」という段階で、明確に説明できていないそうです。

全ての章で驚きがあり、最後の章まで読み進むと、「絶対的」なものなど何もない、という気持ちになります。

その気持ちから考えると、定年に関するあらゆる「常識」が「絶対的」なものではないと思えてきます。

ただ、あまり突き詰めて考えると、生きることの意味すら疑問に思いそうなので、今回は「定年」に関する「常識」だけを疑うことにとどめておきます。

「パパラギ ~はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集~」エーリッヒ・ショイルマン著(立風書房)

3冊目の「パパラギ」は、ドイツの作家エーリッヒ・ショイルマンが、ヨーロッパを旅したサモアの酋長が、帰国後に島民に白人社会を語るという形で現代文明を批判した本です。

「パパラギ」とは現地語で「白人」を意味する言葉だそうです。

はじめにドイツで出版されたのが1920年ですので、相当古い本です。日本では1981年に、今はなき立風書房から出版され当時ベストセラーになりました。

この本も、前述した2冊とアプローチは異なりますが、「常識」というものを一歩引いて別の視点で眺めると、まったく別の解釈ができるという内容です。

「サモアの酋長の島民への語り」をとおして、1920年当時のヨーロッパの「常識」を面白く批判しています。

出版から100年以上たった今読むと、3つの視点を同時に比較することができます。

サモアの酋長の視点、1920年当時の欧州の人々の視点、さらに100年後の我々の視点です。

「職業」について書いてある章がありましたのでご紹介します。

「どのパパラギ(白人)も職業というものを持っている。職業というものが何か、説明するのはむずかしい。

喜び勇んでしなくちゃならないが、たいていちっともやりたくない何か、それが職業というもののようである。」

「パパラギは自分の仕事について話すとき、まるで重荷におさえつけられたようにため息をつく。だがサモアの若者たちは歌いながらタロ芋畑へいそぎ、娘たちも歌いながら流れる小川で腰布を洗う。

大いなる心は、私たちが職業のために青ざめて、ヒキガエルや入江の底をはう虫のように、はいずり歩くことを決して喜びはしない。

大いなる心は、私たちがすべての行ないを、誇り高く、正しく行なうことを、そしていつも喜びの目と、しなやかな手足を持った人間であることを望まれるのだ。」

(P88~93「パパラギの職業について」より)※ページ番号は立風書房のものです

「定年後」も、「元気で誇り高く、喜びの目を忘れずに生活」していくことが最も大切であることに気づかされます。

最後に、タイトル画像にしている「アインシュタイン」の言葉をご紹介します。

“Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen.”

Albert Einstein

「常識とは 18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない。」

アルベルト・アインシュタイン

「常識」にとらわれなくなったあとは、「何をどう考えればいいのか」が気になります。

別記事で「考えることの方法論」がわかる書籍を紹介していますので、気になる方はぜひお読みください。

今回は以上になります。