おすすめ本!定年常識を疑う視点が身につく3冊【厳選】

常識を疑え
  • ネットで「定年後」のいろいろな情報を読んでいたら、よけい頭が混乱してきた。
  • かえって「あせり」や「不安」を感じるようになった
  • こんなことが定年後の常識なのか…。「悲観的」な気持ちになってきた

「定年後」についていろいろ情報集めているうちに、このような気持ちになっていませんか?

本記事では、常識として語られている「定年後」情報にまどわされないよう、視点考え方が変わるオススメ書籍を3冊ご紹介します。

  1. 「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」
  2. 「99.9%は仮説 ~思い込みで判断しないための考え方~」
  3. 「パパラギ ~はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集~」

いろいろな情報を読んでいるうちに、「あせり」や「不安」を感じて「悲観的」な気持ちになってしまった人にぴったりです。

それではさっそく始めましょう。

はじめに:メディアの「定年後」情報は、なぜ不安になるのか

Google検索画面

はじめに、ネット等のメディアで「定年後」情報を調べていると、なぜ「あせり」「不安」を感じてしまうのかをご説明します。

「定年後」に気になる代表的な5つの分野でネット記事のパターンを調べてみました。

5つの分野とは、「仕事」「生活費」「生きがい」「健康」「定年年齢」です。

(この内容については、別記事 »「「定年後」は皆どうしているのか?【データで見る定年後】」で取り上げていますので、興味のある方はぜひお読みください。)

検索結果の上位の記事を読んでみると、このようなパターンがあることに気がつきます。

興味ひかれる話題で始まりますが、途中で「大袈裟なあおり」があり、その解決策として自社の「商品・サービス」を紹介するというものです。

横スクロールできます
分野/記事「起」「承」「転」
大袈裟なあおり
「結」発信元
仕事
・定年後も多くの
人が働いているこ
とについて。
・定年後の仕事は
警備員、清掃員、
介護員、マンショ
ン管理人しかあり
ません

・転職、求人サイ
トを上手に活用し
ましょう。
転職、
求人関係企業
お金・定年後の悠々自
適な生活と生活費
について。
・年金だけでは足
りないですよ。
・よくある退職金

運用の失敗例。

・退職金を上手に
資産運用しましょ
う。
金融関係企業
生きがい・生きがい持つの
は大切。
・趣味ややりたい
ことについて。
・定年後にやって
はいけない事例。
・熟年離婚の事。

・人それぞれしっ
かり考えて準備し
たほうがいいです
よ。
新聞等
メディア関係企業
健康
終活

・定年後の過ごし
方、生き方、健康
のこといろいろな
話題。
・健康でないと何
もできないです
よ。
・人は終わ方が肝

心ですよ。

・健康保険はどう
したらいいのか。
・終活考えてみた
らどうでしょう。
健康保険組合
葬儀系企業等
定年制度・法律の改正につ
いて。
・雇用義務が60歳
から65歳までに移
行、70歳まで努力
義務開始。
・メリットとデメ
リット。
・さまざまな意見

がある実態。

・統計からみた働
き方についてのさ
まざまな課題への
検討を進めています。
行政関係

読んでいる側は「大袈裟なあおり」ばかりが印象に残って、「あせり」「不安」を感じてしまうというわけです。

(大袈裟なタイトルについては、別記事 »おすすめ本!「定年の新常識を確認してみた『雑誌 PRESIDENT』でふれてますので、興味がありましたらご一読ください。)

常識イメージ

さらにどの記事でも「大袈裟なあおり」が繰り返されるので、それがあたかも「常識」かのように刷り込まれてしまうのです。

今回ご紹介する3冊を読むと、そのような「大袈裟なあおり」に左右され、「あせったり」「不安になる」ことがばかばかしく思えてくるはずです。

「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」 ハンス・ロスリング 著(日経BP社)

FACTFULNESS

1冊目の「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」は、医師であるハンス・ロスリング氏がその息子夫婦とともに執筆しました。

2020年に最も売れたビジネス書で、日本の販売数は100万部を突破しています。(出典:日経BP)

本書は、ビル・ゲイツ氏(Microsoft会長)やバラク・オバマ氏(元アメリカ大統領)も絶賛しています。

「名作中の名作。世界を正しく見るために欠かせない一冊だ」―ビル・ゲイツ

「思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進める。そんな希望を抱かせてくれる本」―バラク・オバマ

特にビル・ゲイツ氏は、2018年にアメリカの大学を卒業した学生のうち、希望者全員にこの本をプレゼントしたほどです。

本書は、「定年後」を考えるうえで非常に役立つ書籍です。

著者のハンス・ロスリング氏の有名なTEDトーク「ハンス&ローラ・ロスリング:世界について無知にならないために」もご紹介します。

一緒にご覧いただくと、より理解が深まります。

YouTube:TED公式チャンネルより<19:10>

常識という名のさまざまなバイアス(先入観や偏見)

「FACTFULNESS」では、「これが常識だ」と考えているものの中に、さまざまなバイアス(先入観や偏見)がかかっていることを分かりやすく解説しています。

冒頭に「13問のクイズ」があります。

例えばこのような内容です。

質問1:現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょうか?

A:20%

B:40%

C:60%

正解:C

すべて3択なのでチンパンジーが無作為に選んでも1/3である4問正解、正解率33.3%ということなので、かなり真剣にやってみました。

結果は正解2問。15.4%の正解率

残念ながらチンパンジーに負けてしまいました。

ハンス・ロスリング氏はこのクイズを高学歴者や専門家に実施したところ、平均正解率は16.6%。こちらもチンパンジー以下だったとのことでした。

不正解の原因が常識という名のさまざまなバイアス(先入観や偏見)だと語っています。

そのことを「10の本能」に分けて、その「思い込み」と「対処法」を解説しています。

10の本能思い込み対処法
1. 分断本能「世界は分断されている」という思い込み大半の人はどこにいるのかを探そう
2. ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み悪いニュースのほうが広まりやすいと覚えておこう
3. 直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み直線もいつかわ曲がることを知ろう
4. 恐怖本能「危険でないことを、恐ろしい」と考えてしまう思い込みリスクを計算しよう
5. 過大視本能「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み数字を比較しよう
6. パターン化本能「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み分類を疑おう
7. 宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込みゆっくりとした変化でも変化していることを心に留めよう
8. 単純化本能「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込みひとつの知識がすべてに応用できないことを覚えておこう
9. 犯人探し本能「誰かを攻めれば物事は解決する」という思い込み誰かを責めても問題は解決しないと肝に銘じよう
10. 焦り本能「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み小さな一歩を重ねよう

この中から「パターン化本能」と「恐怖本能」をご紹介します。

「パターン化本能」 ~メディアの影響 間違ったパターン化~

第6章で解説しているバイアスは「パターン化本能」です。

まさに、メディアの影響について触れている章になります。

パターン化は、メディアの十八番でもある。

パターン化がメディアにとって手っ取り早い情報の手段になり、それが誤解を生みだしている。…(中略)…

間違ったパターン化は思考停止につながり、あらゆる物事への理解を妨げてしまう。

(P190「第6章 パターン化本能」より)

これを「定年後」記事にあてはめるとこうなるのでしょう。

定年後の職業は、警備員、清掃員、介護員、マンション管理人しかない。

定年後の生活費は年金だけでは足りない。

定年後は生きがいを持たないと寂しい人生になる

という間違ったパターン化は思考停止につながり、あらゆる物事への理解を妨げてしまう。

パターン化を避けてゼロベースで考えてみようという気になります。

「恐怖本能」 ~不安なものにはリスクがあるように見えるだけ~

第4章で解説しているバイアスは「恐怖本能」です。

「恐ろしいものには自然と目がいってしまう」傾向に気づき、リスクを正しく見極める大切さを解説しています。

「恐怖」と「危険」はまったく違う。

恐ろしいと思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。

一方、危険なことには確実にリスクがある。

恐ろしいことに集中しすぎると、骨折り損のくたびれもうけに終わってしまう。

(P158 「第4章 恐怖本能」より)

これも「定年後」に置き換えて考えてみました。

「定年後」の「不安」と「危険」は全く違う。

不安に思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。

不安なことに集中しすぎると、骨折り損のくたびれもうけにおわってしまう。

「不安」はリスクそのものではないと考えることができます。

最終章のことば ~「定年後」に大切なことばは「謙虚さ」と「好奇心」~

最終章に、「定年後」を考えるうえで大切なことばがありますのでご紹介します。

本書では、子供たちに教えるべきこととして書かれています。

<謙虚さ>

謙虚であることは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくことだ。

自分の知識が限られていることを認めることだ。

堂々と「知りません」と言えることだ。

新しい事実を発見したら、喜んで意見を変えられることだ。

謙虚になると心が楽になる。何もかも知っていなくちゃならないというプレッシャーがなくなるし、いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい。

(P316「第11章 ファクトフルネスを実践しよう」より)

<好奇心>

好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し、受け入れるということだ。

自分に考えに合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めることだ。

答えを間違っても恥とは思わず、間違いをきっかけに興味を持つことだ。(中略)

好奇心を持つと心がワクワクする。

好奇心があれば、いつも何か面白いことを発見し続けられる。

(P316~317「第11章 ファクトフルネスを実践しよう」より)

同様のことが「LIFE SHIFT」(リンダ・グラットン著)にも書かれています。

それは、人生100年時代の「新しいライフスタイル」を生きるために必要な資産(変身資産)の説明です。

(「LIFE SHIFT」は、別記事 »「人生100歳時代」をどう生きるのか【LIFE SHIFT】(リンダ・グラットン著)で詳しく説明していますので、興味を持った方は、ぜひそちらもお読みください。)

「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」で解説している、

常識という名の10のバイアス

最終章のことば「謙虚さ」「好奇心」は、

「定年後」を考えるうえで欠かせないキーワードであると実感しています。

「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」の紹介は以上です。

常識という名のバイアス(先入観や偏見)を打ち破りましょう!

「99.9%は仮説 ~思い込みで判断しないための考え方~」竹内 薫 著(光文社新書)

2冊目の「99.9%は仮説」は、サイエンス・ジャーナリストである竹内 薫氏が執筆した著書です。

科学的なアプローチから「思い込み」の危険性を解説したビジネス書と言えます。

折にふれ読み返しているのですが、そのたびに驚かされます。

「ファクトフルネス」を読んでこの本をすぐに思い出しました。

アプローチは違いますが、言いたいことは同じく「常識を疑え」ですので。

オーストラリアの世界地図 ~上下がさかさま~

冒頭から完全にノックアウトされます。

ページを開くとすぐに「これは、いったいなんでしょうか?」という問いかけがあります。

さかさまの世界地図

これは、オーストラリアで売られている「世界地図」です。

本当に売られているのか調べてみました。

確かに、オーストラリアやニュージーランドでは上下逆の世界地図が販売されていました。

イギリスの植民地時代に、「Down Under」と呼ばれることに反発してつくられた地図とのことです。

地図は上が北だということは「常識」です。

たしかに「常識」ではありますが、それが正しいわけではありません。

地図の上を北にすることが普及したのは、16世紀ぐらいだそうです。

立場がかわれば、上が南の地図が存在することも不思議ではありません。

飛行機が飛ぶ理論を完全に説明できない

プロローグでも驚きます。

「飛行機が飛ぶ理論を完全に説明できていない」ということなのです。

「そんな馬鹿な、飛行機を作っているじゃないか。」と誰もが思います。

こちらも調べてみました。

飛行機が飛ぶ基本的なメカニズムはわかっているが、「揚力」がどのように発生するのかについて、完全に統一された理論がないということです。

「常識」だとおもっていたことが、じつは「仮説」にすぎなかったという事例です。

「飛行機が飛ぶ」という、一見あたりまえの事実でさえ、その本当の原因はさまざまな経験則による推測にすぎず、いってみれば、ただの「仮説」にすぎないわけです。

つまり、肝心の部分はよくわからないということです。

(P28 プロローグ「飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない」より)

自分の頭の中の仮説に気づく ~常識を疑ってみる~

全ての章で驚きがあり、最後の章まで読み進むと、「絶対的」なものなど何もない、ほとんどは「仮説」なのかもしれない、という気持ちになります。

「定年後」に関するあらゆる「常識」「絶対的」なものではないと思えてきます。

ただ、その時に支配的な「仮説」に過ぎないのだと。

メディアでよくいわれている「定年後の常識(支配的な仮説)」はどうでしょうか。

定年後の職業は、警備員、清掃員、介護員、マンション管理人しかない。

定年後の生活費は年金だけでは足りない。

定年後は生きがいを持たないと寂しい人生になる

仮説の呪縛からのがれる万能薬などありません。

ですが、できるだけたくさんの仮説を見比べることにより、だれでも、支配的な仮説を疑うことは可能なのです。

少しでも違和感があったり、腑に落ちないことがあったら、「この仮説はどのパターンか?」と考えてみればいいのです。

そして、それができるようになるためには、あらかじめたくさんのパターンに触れて、免疫をつけておくことが必要なのです。

(P96~97 第2章「自分の頭のなかの仮説に気づく」より)

まずは疑ってみることが必要ですね。

ただ、あまり突き詰めて考えると、生きることの意味すら疑問に思いそうなので、今回は「定年」に関する「常識」だけを疑うことにとどめておきましょう。

それだけ、インパクトのある本です。

「99.9%は仮説」の紹介は以上です。

「常識」という名の「支配的な仮説」を打破しましょう!

「パパラギ ~はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集~」エーリッヒ・ショイルマン著(立風書房)

3冊目の「パパラギ」は、ドイツの作家エーリッヒ・ショイルマンが、ヨーロッパを旅したサモアの酋長が、帰国後に島民に白人社会を語るという形で「常識」を批判した本です。

「パパラギ」とは現地語で「白人」を意味する言葉だそうです。

はじめにドイツで出版されたのが1920年ですので、相当古い本です。

日本では1981年に、今はなき立風書房から出版され当時ベストセラーになりました。

この本も、前述した2冊とアプローチは異なりますが、「常識」というものを一歩引いて別の視点で眺めると、まったく別の解釈ができるという内容です。

「サモアの酋長の島民への語り」をとおして、1920年当時のヨーロッパの「常識」を面白く批判しています。

出版から100年以上たった今読むと、3つの視点を同時に比較することができます。

サモアの酋長の視点、1920年当時の欧州の人々の視点、さらに100年後の我々の視点です。

「職業」のとらえかたの差 ~パパラギとサモアの酋長~

「職業」について書いてある章がありますのでご紹介します。

どのパパラギ(白人)も職業というものを持っている。職業というものが何か、説明するのはむずかしい。

喜び勇んでしなくちゃならないが、たいていちっともやりたくない何か、それが職業というもののようである。(中略)

パパラギは自分の仕事について話すとき、まるで重荷におさえつけられたようにため息をつく

だがサモアの若者たちは歌いながらタロ芋畑へいそぎ、娘たちも歌いながら流れる小川で腰布を洗う。

大いなる心は、私たちが職業のために青ざめて、ヒキガエルや入江の底をはう虫のように、はいずり歩くことを決して喜びはしない。

大いなる心は、私たちがすべての行ないを、誇り高く、正しく行なうことを、そしていつも喜びの目と、しなやかな手足を持った人間であることを望まれるのだ。

(P86~93「パパラギの職業について」より)

「定年後」も、「元気で誇り高く、喜びの目を忘れずに生活」していくことが最も大切であることに気づかされます。

「考える」という思い病気

「考える」ということも、視点を変えると価値が変わって見えてきます。

彼らはいわば、自分たちの思想に酔っぱらっているようなものだ。日が美しく輝けば、彼らはすぐに考える。

「日はいま、なんと美しく輝いていることか!」彼らは切れ目なく考える。「日はいま、なんと美しく輝いていることか」これはまちがいだ。大まちがいだ。馬鹿げている。

なぜなら、日が照れば何も考えないのがずっといい。

かしこいサモア人なら、暖かい光の中で手足を伸ばし、何も考えない。

頭だけでなく、手も足も、腿(もも)も、腹も、からだ全部で光を楽しむ。

皮膚や手足に考えさせる。頭とは方法が違うにしても、皮膚だって手足だって考えるのだ。

(P107~108 「考えるという重い病気」より)

「定年後」の生き方を考えるとき、頭だけで考えるのではなく、一歩引いてさまざまな視点を意識する大切さに気づかされます。

皮膚だって考えるのであれば、「肌感覚」のようなものでしょうか。

サモアの酋長ツイアビの言葉は、「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」でいう、さまざまなバイアス(先入観や偏見)を思いおこさせます。

ここでもやはり、常識だと思い込んでいることを、疑ってみることが大切だと気づかされます。

「パパラギ」の紹介は以上です。

「Don’t think! Feel.」(考えるな! 感じろ)で「常識」を打ち破りましょう!

まとめ:タイトルのアインシュタインの言葉

常識を疑え

最後に、タイトル画像にしている「アインシュタイン」の言葉をご紹介します。

「常識」について端的に説明しています。

“Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen.”

Albert Einstein

「常識とは 18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない。」

アルベルト・アインシュタイン

今回は以上になります。

別記事で、「常識にとらわれずに考える方法論」がわかる書籍を紹介していますので、興味のある方はぜひお読みください。