「定年後」は皆どうしているのか?【データで見る定年後】

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  • 「定年後」は皆どう生活しているのだろう?
  • 「定年後」どうするかを考え始めたけど、世の中の“傾向”をデータでおさえておきたい。

「定年後」は皆どうしているのか気になりませんか。

本記事では、「定年後」につて、さまざまな機関で発表しているデータをもとに、「定年後」はどう考え、どう過ごされているのかをご案内します。

世の中の動きをおさえておくことは、自身の「定年後」を考える上で参考になるはずです。

では、さっそく始めましょう。

「定年後」も7割以上が働いている

皆さん「定年後」(60歳から)は働いているのでしょうか?

「会社でも60歳以降は再雇用を選択する人が増えているし、働いている人は増加しているんじゃないかな」

「マクドナルドでも70歳くらいのシニアアルバイトよく見るし、確実に増えている実感ある」

総務省「労働力調査」によると、2022年は、60~64歳で7割以上の方が働かれています。

65~69歳でも5割以上70~74歳でも3割以上という結果です。

しかも就業率は年々増加していますね。

高年齢者雇用安定法の改定で、2025年4月から65歳までの雇用機会の継続が義務化がスタートしましたし、今後も60歳以上の就業率は増加傾向は変わらないでしょう。

»内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況(第2節 1)」より

男女別で見ると、男性では60〜64歳でなんと8割以上65〜69歳で6割以上の方が働かれています。

»総務省統計局 統計トピックスNo.132「統計からみた我が国の高齢者 2.高齢者の就業」より

さらに、何歳まで働きたいか?の質問では、「働けるうちはいつまでも」と回答した人が4割近を占めて、高い就労意欲が感じられます。

»内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況(第2節 1)」より

60~64歳で7割以上の方が働いており、「働けるうちはいつまでも」と考えている人が4割近くいるということがわかりました。

「定年後」の勤務先は65%が同じ会社で再雇用

「定年後」の勤務先と雇用形態はどうなっているでしょうか。

「同じ会社で再雇用」であると予想がつきますが、念のため調べてみました。

日経BPコンサルティングの調査によると、勤務先については同じ企業で再雇用が65.3%子会社やグループ会社も合わせると全体の7割以上また、雇用形態は「正社員か契約社員がほとんどで、派遣社員やパート、アルバイトは少数派。」との結果でした。

»日経BPコンサルティング「定年後の就労に関する調査」(2021年)

やはり、7割以上の方が同じ会社の再雇用で働いていました。

働く理由が気になりますね。

「定年後」に働く3つの理由は「生活費」「生きがい」「健康」

「定年後」に働く理由は何なのでしょうか?

年金支給開始が65歳からだから、60歳〜65歳は働かないわけにいかないでしょう。

「とにかく生活費ですよ」

行政機関や民間研究所等の調査を調べてみました。

結果は、予想とおり「生活費・生活維持」などの経済的理由が最も多く、次いで「生きがい・社会とのつながり」など心の理由、その次が健康」の身体の理由という傾向でした。

横スクロールできます
調査「高齢期に向けた『備え』
に関する意識調査」
「50 代・60 代の働き方に
関する意識と実態」
「60代の雇用・生活調査」「定年後の働き方に関する
意識と実態調査」
調査機関内閣府明治安田生活福祉研究所労働政策研究・研修機構朝日新聞社
調査時期2013年2018年2019年2022年
調査対象35歳~64歳男女
2,707人
50~69歳男女
6,250人
60~69歳男女
2,883人
「Reライフ.net」読者会議メンバー439人
質問内容60歳以降に就労を希望する理由
(3つまでの複数回答)
定年後も働いている理由
(定年後有職者(男性)・複数回答)
就業している動機
(複数回答)
定年後も働く理由
(複数回答)



<60~64歳><65~69歳>



1生活費を得たいから76.7%日々の生活維持のため64.7%生活のハリ・
生きがいを持つため
46.6%経済上の理由76.4%社会とのつながり
持ち続けたい
60.4%
2自由に使えるお金が欲しいから41.4%生活のハリ・
生きがいを持つため
34.9%日々の生活維持のため42.9%いきがい、
社会参加のため
33.4%自分や家族の
今の生活資金のため
57.6%
3仕事を通じて、友人、仲間を
得ることができるから
30.1%社会とのつながり
持ちたいため
20.8%社会とのつながり
持ちたいため
28.7%時間に余裕があるから22.6%趣味や娯楽を楽しむ
資金のため
43.1%
4生きがいが得られるから28.9%より豊かな生活をするため19.5%健康のため22.0%健康に良い20.6%自分や家族の
将来の生活資金のため
43.1%
5不測の事態に備えるため23.9%健康のため12.6%より豊かな生活をするため20.7%頼まれたから15.6%社会に貢献したい27.6%
※スマートフォン:横スクロール

出典

»内閣府「高齢期に向けた「備え」に関する意識調査」

»明治安田生活福祉研究所「50 代・60 代の働き方に関する意識と実態」

»労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」

»朝日新聞「定年後の働き方に関する意識と実態調査」

働く理由は「生活費」のためだけでなく、「生きがい」や「健康」も上位をしめていることがわかります。

面白いのは、「明治安田生活福祉研究所」の調査で、60〜64歳と65〜69歳で「生活費」と「生きがい」の順序が逆転しているところです。

年齢が上がると、「生活費」より「生きがい」を重要視するようです。

定年年齢の変化

「定年年齢」がどう変化しているかを確認しておきましょう。

「法定定年年齢」は何歳?

「法定定年年齢」は何歳でしょうか?

「定年は2025年4月からは65歳に義務化されたから”65歳”じゃないかな

このように理解していると思います。

しかし…

2024年は60歳2025年4月からも同じ60歳です。

65歳までの「継続雇用」 2025年4月から義務化スタート

「えっ、定年年齢って65歳に変わるんじゃないの?」

そう思われた方も多いのではないでしょうか。

義務化になるのは「法定定年年齢」ではなく「継続雇用年齢」です。

何が違うのでしょうか。

法定定年年齢(60歳)

「法定定年年齢」とは、文字とおり法律で定められた「定年年齢」のことです。

「高年齢者雇用安定法」で定められています。

1998年(平成10年)から定年年齢は60歳以上に義務化されました。

60歳未満の定年禁止

第八条 事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない

e-GOV 法令検索:高年齢者雇用安定法 第8条(定年を定める場合の年齢)

継続雇用年齢(65歳)

「継続雇用年齢」とは何なのでしょうか。

企業が継続して雇用を確保しなければいけない年齢です。

この年齢こそが、2025年4月より義務化されました。

企業は「高年齢者雇用確保措置」を3つから選ばなければなりません。① 65歳までの定年引き上げ、② 65歳までの継続雇用制度(希望者全員)の導入、③ 定年制の廃止

65歳までの雇用確保措置 

第九条 定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一 当該定年の引上げ

二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)の導入

三 当該定年の定めの廃止

e-GOV 法令検索:高年齢者雇用安定法 第9条(高年齢者雇用確保措置)

【参考】

»厚生労働省ホームページ『65歳までの「高年齢者雇用確保措置」』

厚生労働省ホームページ「高年齢者の雇用」

3つの「高年齢者雇用確保措置」のうち最も多いのは何?

3つの「高年齢者雇用確保措置」① 65歳までの定年引き上げ、② 65歳までの継続雇用制度(希望者全員)の導入、③ 定年制の廃止で、最も多いのは何なのでしょうか。

厚生労働省の発表によると、

  1. 継続雇用制度の導入 69.2%
  2. 定年の引上げ    26.9%
  3. 定年制の廃止    3.9%

という結果です。

やはり「継続雇用制度の導入」が7割、最も多くなっています。

企業の人数が少ないほうが「定年制の廃止」「定年の引上げ」が多いのは興味深い結果です。60歳以降も働いてほしいということですね。

65歳までの継続雇用が義務化されたので、定年が65歳と考えても差し支えないですね。

ただ、自分の会社がどういった制度なのかは、「就業規則」を確認しておく必要があります。

70歳までの「就業機会の確保」 努力義務

70歳まで雇用の努力義務がはじまったらしいけど、それはどんな内容なのかな。

こちらも気になりますね。

2021年4月1日より施行されている「高年齢者雇用安定法」で、「65歳から70歳までの就業機会を確保する」努力義務が定められています。(まだ義務化の期日は示されていません。)

ポイントは、「雇用確保措置」から「就業機会の確保」に表現が変わったところです。さらに注目すべきは、努力内容に「業務委託契約」が盛り込まれているという点です。

70歳までの就業機会の確保

70歳までの定年引き上げ

定年制の廃止

70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

»厚生労働省ホームページ「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」

「業務委託契約」制度とは、「従業員」は「個人事業主」になり、会社対個人事業主で「業務委託契約」を結ぶという制度です。一度退社しますので、会社から見ると「雇用」ではなくなります。

»別記事で、「雇用形態」をわかりやすく一覧表にしていますのでご参照ください。

「雇用確保措置」から「就業機会の確保」に変わったということは、「雇用」しないパターンもOKになったということです。

これは大きな変化ですね。

「定年年齢」の変化まとめ

定年年齢の動向をまとめるとこのようになります。

  • 定年年齢」については、「法定定年年齢」は60歳のまま変わらないが、「継続雇用」が65歳まで義務化
  • どのような「雇用確保措置」を導入するかは、企業により異なる
  • 70歳までの「就業機会の確保」が努力義務になり、働く環境はさらに伸びる傾向
  • 「就業機会の確保」の考え方に移行。雇用しないパターンもOKになった

わかりやすいように一覧表にしてみました。

<定年年齢推移表> 

横スクロールできます
年代それ以前1986年
(昭和61年)
約40年前
1998年
(平成10年)
約25年前
2013年
(平成25年)
約10年前
2021年
(令和3年)
4年前
2025年
(令和7年)
定年年齢55歳

60歳
努力義務
スタート
60歳
義務化

65歳
努力義務
スタート
70歳
努力義務
スタート
65歳
義務化


(定年内容)
(一般的な
定年年齢)
(法定
定年年齢)
(法定
定年年齢)
(雇用の確保)(就業機会の
確保)
(雇用の確保)
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まとめ:データで見る「定年後」

「定年後」はどうしているのかについて、今回は様々なデータから動向をみてみました。

まとめると、4つのテーマに高い関心がありました。

「定年後」の4大テーマ

●「定年後」は7割以上の人が働いている(「①仕事」)

● 働く理由のベスト3は「②生活費」「③生きがい」「④健康」

「定年後」どうするか悩んだ時は、この「4大テーマ」を参考に深堀りしていけばよいですね。

深掘りする前の役立つ準備を、別記事 »今始めないと「定年後」に絶対後悔する【日常の簡単な3つの行動】にまとめてありますので、よろしければあわせてお読みください。

3つのアクション

今回は以上です。