
- 自分の「価値観」を聞かれたけどこたえられなかった
- 自分の「価値観」を考えてみたけど、ちっともわからない
- 簡単に自分の「価値観」がわかる方法を知りたい
このように考えている方にピッタリの方法をご紹介します。
3ステップで簡単にできる「価値観抽出・診断法」です。
・「価値観」は物事を判断する基準
・判断しているのは「意識」ではなく「無意識」だった
・「無意識」が持つ「価値観」を「ブレインダンプ」の応用手法で抽出
・抽出する手順は簡単。3ステップのみ
この記事を書いている筆者は、心理学科卒の中小企業診断士。ここで紹介する手法を実際にためしてみて、自分の「価値観」を絞りだす効果を実感しました。具体的なやり方を解説します。
自分のことなのに、なぜかよくわからないものが「価値観」です。
なかなか言語化できないと感じていませんか。
今回ご紹介するのは、今まで「なんとなく」選んできた「自分のFACT(事実)」をもとに、自分の「価値観」を抽出する方法です。
具体的な進め方は「ブレインダンプ」と似ています。
「ブレインダンプ」とは、ブレイン(脳)の中をダンプする(すべて書き出す)という意味の「思考法」で、ビジネスやクリエイティブな分野で広く活用されています。
興味のある方はこちらの記事で詳しく紹介していますので、のちほどぜひお読みください。
まずはこちらから。さっそくはじめます。
「価値観」とは。物事を判断する基準

「価値観」とはどのようなものでしょうか。
Webio辞書(実用日本語表現辞典)によると、
「個々の人が物事を判断する際の基準や規範を指す言葉」
となっています。
もう少し簡単にいうと、
「何が大切で何が大切でないかを判断するための、個人の基本的な信念や考え方のこと」
です。
今まで、自分の「価値観」によって、さまざまなモノやコトを判断してきました。
それなのに、不思議とうまく言葉で説明できません。
身の回りには、自分の「価値観」で選んできたものだらけなのにです。
捨てられないもの、気にいっているもの、何度も見返してしまうものなど、「価値観」がカタチになったものがたくさんあることに気がつきます。
「価値観」で物事を判断しているのは「誰」なのか

自分の「価値観」にもとづいて、物事を判断しているのは「誰」なのでしょうか。
「もちろん、自分(意識)が判断している」と私たちは思っています。
でも、もしかしたら違うのかもしれません。
「無意識」が判断しているという学説
社会心理学者のジョナサン・ハイトは
「人はまず無意識的・直感的に判断し、その後に理由をつける」
と述べています。
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カールマンは、著書「ファスト&スロー」で
「無意識のシステム1が判断をし、意識のシステム2が後付けする」
という理論を説明しています。

神経生理学者のベンジャミン・リベットは、著書「Mind Time」で
「意識的な意思決定が無意識的な脳活動の後に生じる」
ということを、実験をとおして提唱しています。

経営心理学の分野で著名な、東京都立大学大学院 長瀬勝彦教授の『組織科学』誌に掲載された論文「感情と理性の折り合いとしての意思決定」にも、このようなことが書かれていました。
「決めているのは無意識であり,意識は後追いでそれを感じているのだけれども,脳が意識の時間の感覚をさかのぼって修正して,あたかもそのとき意識が決めているかのように整合性をとっていると解釈される」
これらの学説はとても腑に落ちます。
皆さんも何となくそう感じることが多いのではないでしょうか。
古典的な経済学や認知心理学では、ヒトは「意識的にすべてを判断する」、「合理的に意思決定する」とされていました。
しかし、近年の心理学では、「無意識や感情の影響が大きい」という見方が主流となっているのです。
もし、「意識(自分)」が「無意識」で決めたことの後追いをしているだけだとしたら、「価値観」をうまく言語化できなくても納得がいきます。
心の領域「無意識」とは
自分の「価値観」を持っているのが「無意識」だとすると、「価値観」を言葉で説明するのは簡単ではなさそうです。
なぜなら、「意識(自分)」では認識できない領域が「無意識」だからです。
ヒトの心には「無意識」という領域があることを、はじめに提唱したのは精神分析の創始者であるジークムント・フロイトです。
フロイトはヒトの心を3つの領域にわけて説明しています。
わかりやすく図にしました。

スラスラと自分の「価値観」を語る人が、話した内容とまったく違う行動をしているという経験はありませんか。
これは、意識(自分)」が認識している「価値観」と、「無意識」が持っている本当の「価値観」がズレている例です。
じゃあ、いったいどうすればいいのでしょうか。
「価値観」を言語化する方法「コア・エスプレッシング(価値観抽出法)」

今まで「無意識」が判断した結果である「自分のFACT(事実)」から「価値観」を逆算することは、一つの有効な方法です。
この方法は「ブレインダンプ」の応用手法というだけで、特に決まった名称はありませんので、「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」(価値観抽出法)と呼ぶことにします。
身の回りの「捨てられないもの」気にいっているもの」「何度も見返してしまうもの」など、「価値観」で選んできたものを書き出し、書き出したものから「共通する要素」を絞り出して、逆算で「価値観」を抽出していきます。
ちょうど、珈琲豆に高圧をかけて「エスプレッソ」を抽出するようなイメージです。
「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」(価値観抽出法)の特徴

「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」(価値観抽出法)の基本的なやり方は「ブレインダンプ」と同じです。
書き出す「テーマ」に特徴があります。
特に深く考えるようなことはなにもありません。
身の回りのものをながめて書き出せばいいだけです。
気軽にすすめていけます。
違いは、「ブレンダンプ」では書き出すときにパワーを使いましたが、「コア・エスプレッシング」は書き出したあとの「価値観」を抽出するときにパワーを使うことです。
「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」(価値観抽出法)の3ステップ
「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」(価値観抽出法)のやり方は簡単です。
3つのステップのみです。
「無意識」が持っている「価値観」を、3ステップでどのように言語化するのかを図式化しました。

[Step1] 「テーマ」にそってひたすらFACTを書き出す
[Step2] 書き出したものから「共通する要素」を抽出する
[Step3] 抽出した言葉をつなげて「自己紹介文」をつくる
[Step1] 「テーマ」にそってひたすらFACTを書き出す

書き出すテーマはこちらです。
好きな芸能人、俳優 | なぜか惹かれてしまう推し 特定の映画やドラマの役柄など |
好きな作家、 映画監督 | おもしろいと思った作品がいつも同じ人だったなど |
好きな人物 (上記以外) | 著名人でも知人、友人でも |
好きな本、映画 | 何度も読みかえしたり、観かえしているもの |
好きな車、 自動車メーカー | 昭和世代なら車にいっかげんあるでしょう 車ではなく電車やバイクでもOK |
好きなスポーツ | 自分がやっていても、観戦だけでもよい |
好きなファッション | 普段気にいって着ているもの |
好きなデザイン | シンプルなのか派手なのか 具体的に◯◯のデザインなど |
好きなアイテム、 モノ | 身につけるものや持ち物などなんでも 買って満足しているもの |
好きな料理、飲み物 | 理屈なく好きなもの |
好きな香り | 癒やされるとか落ち着くもの |
好きな活動、趣味 | 考えるとワクワクする 楽しみで眠れなくなるコト |
その他 (趣味性の高いもの) | とにかく好きなもの 理屈なく惹かれてしまうも |
理屈ではなくて直感的に好き嫌いが分かれるもの、趣味性の高いものであれば、このテーマ以外を加えてもらってかまいません。
今まさにはまっているものから、昔はまっていたものまで思いついたらすべて書き出します。
テーマが重くないので気軽に書き出せるのではないでしょうか。
書き出す時間

『ブレインダンプ』では、丸一日、最低でも6時間をすすめていますが、このテーマならそこまでかけなくても書き出せるのではないでしょうか。
身の回りのFACT(事実)を書き出すだけですので。
ただ、出し切ったと思えるまで書き出したほうが、その後の「価値観」抽出には効果的です。
書くツール

『ブレインダンプ』でご紹介したとおり、発想が自由になる書きやすいツールを使うことが一番です。
アナログツールだけではなく、Excel、オンラインホワイトサービス「Miro(ミロ)」などを使ってもかまいません。
オンラインホワイトボードサービス「Miro(ミロ)」のご紹介

無料で使えるオンラインホワイトボードサービス「Miro(ミロ)」をご紹介します。
2022年6月より日本語版がリリースされました。
複数での使用を想定しているオンラインサービスですが、ひとりでも利用できます。
無料プランでじゅうぶんですし、利用期間に制限もありません。
書く場所

これも『ブレインダンプ』でご紹介したとおりです。
リラックスできて、発想のわく場所ならどこでも大丈夫です。
[Step2] 書き出したものから「共通する要素」を抽出する

「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」(価値観抽出法)はここがキモです。
書き出したものの中から、テーマごとに「共通する要素」を言語化し、図式化していきます。
書き出したものは、「無意識」が「価値観」により選んできたものです。必ず「共通点」があります。
基本的には『ブレインダンプ』でご紹介した、「KJ法」の要領で進めます。
書き出した一つ一つの内容の、どの部分が気にいっているのか、なぜ気にいっているのか、なぜ何回も読みかえしてしまうのか、なぜずっと気にいっているのか、深く考えていきます。
ここは、「考える」というより「感じる」というほうが近いのかもしれません。
Espresso(エスプレッソ)をつくるように、「書き出したもの」に高圧をかけて 「共通する要素」を抽出するようなイメージです。
そして、ピッタリする「言葉」を探していきます。
例えば、「自分が気にいっているアイテム・モノ」には、「シンプル」「機能美」「個性的」という共通の要素があるかもしれません。
何度も読み返している本や映画には、すべてに「チャレンジ精神」「あきらめない気持ち」「努力」という共通の要素が抽出できるかもしれません。
いくつかのテーマを俯瞰してみると、「個性的」「ユニーク」という言葉が共通しているかもしれません。
次は、抽出した「言葉」を使って「無意識」が持っている「価値観」を逆算していきます。
[Step3] 抽出した言葉をつなげて「自己紹介文」をつくる

最後は、抽出した言葉をつなげて、「自己紹介文」をつくります。
どのようにつなげてもかまいません。ポジティブな文章にしてみましょう。
例えば、「本質的」「ユニーク」「シンプル」「洗練」「自由」「チャレンジ精神」「努力」という言葉が抽出されたとします。
このような自己紹介文をつくることができます。
私は、「シンプル」で「洗練」されたライフスタイルを好みます。
今まで困難なことにも「努力」を惜しまず「チャレンジ精神」で乗り越えてきました。
「自由」で「ユニーク」なアイデア、発想力で、「本質的」なコトやモノを創り出していく特徴があります。
自分が一番しっくりくる「自己紹介文」にしてみましょう。
この「自己紹介文」こそが、自分の本当の「価値観」です。
いつも後追いをしているだけの「意識(自分)」が、身の回りの事実の断片から「無意識」が持っている「価値観」を逆算したものなのです。
まとめ:「定年後」は、自分の「価値観」で考える
今回は、「ブレインダンプ」の手法を応用して、自分の「価値観」を抽出・診断する方法を解説しました。
これからも、決断するのは「無意識」で「意識」は後追いなのかもしれません。
でも、もし「意識」が選択する場面がきたとしたら、誰にどいう言われようと、自分の「価値観」をもとに考えて判断すれば、間違った選択をしないですむはずです。
ピーター・ドラッガーの言葉にこのようなものがあります。
自分を本来の自分でない誰かに変えようとして成功した人はいない。
成功したのは、本来の自分になろうとした人である。
ぜひ、「Core-Espressoing/コア・エスプレッシング」で、自分の「価値観」を抽出してみてください。
今回は以上です。